体が裂けるのではないかと思うほどの轟音が耳を劈いて、銀時は思わず身構えた。火薬と血の匂いが鼻についてむせ、目をひりひりとした痛みが走って涙を滲ませる。
正直言ってもう限界だ。戦に行ったものの経験と本能がそれを告げている。それでも、背に負うた者達を守るべく銀時は刀を構え、まだ見えぬ敵に切っ先を向けた。
粉塵はまだ室内に立ち込め、どんよりとうねっている。先程の爆発でどこぞに穴が開いたのか、風が帯となって煙を巻き上げていく。巻き上げられた濁った空気が渦潮柄の着物の裾を翻していった。
煙の向こうからざり、ざり、と瓦礫を踏みしめる音が聞こえて銀時は目をこらす。壁を突き破った奴らがどうやら乗り込んできたらしい。あちらさんは一人、二人・・・いや三人だ。ガタの来ている体では少しキツイかと舌打ちをする。
はためく着物の音にそれと当たりをつけているのか、真っ直ぐにこちらへと向ってくる。それ程遠くも無い。姿を見せた瞬間に先手をうつべく銀時は体の重心を更に低くした。背後に守る新八達が息をのむ。
あと15m、10m・・・。もうすぐそこまで来ている。銀時は全身の筋肉をしならせた。
煙に人影が映った瞬間、銀時は猫のように跳ね、突いた。狙うは咽喉、ここを咄嗟に狙われて避けられる者はそうはいない。志士時代の経験だ。しかし、まだ見えぬ相手は避けるでもなく、反応した。金属音。刀を弾かれる。
距離をとり、第二打を。身構えた瞬間、突風が吹いて眼前が晴れた。向こうの壁には大穴が開いていて、抜けるような青空が広がっているのが見える。
その空をバックに、立つ男三人。涙で滲みながらも見える敵の顔に銀時はしばし呆然とする。あ、と背後で漏れた言葉には喜色が籠っている。
決まり悪げに視線をやると、眼前の男がにやりと笑い、羽織った襦袢の内へ刀を納めた。後の二人も含み笑いをしている。
「馬鹿面下げて何してるんですかー?お前ら?」
「そりゃ、こっちの台詞だ。」

「・・・・助けに来てやったぜ、銀時。」

「・・・男心に涙が出るな(笑)」

「(笑)ってなんだよ、お前!!・・・とりあえず。」










「借金返せこのやろー。」
「こちとら、その日暮らしだ。そんな金ありませーん。」

「ちなみにいくらじゃ?」
「200円。」
「そのくらい返せ馬鹿。」
「オメーが馬鹿。」
「っていうか、たかが200円ぐらいで請求するな。」
「たかが200円、されど200円だっつーの。」

「あの、皆さん!!今度こそ本当に敵がくるんですけどぉぉぉぉぉっ!!」