ごめんなさい。別に貴方が嫌いなわけじゃない。
そんな顔をして欲しいわけじゃない。
貴方が誰よりも人を傷つける事に心を痛めているんだという事も知ってる。
誰よりも優しい人だという事も。

けれど。


急にたまらなくなる。許せなくなる。
目の前にいる男が、優しい視線を投げかけてくれるこの男が。
あの人を殺した奴らと同じだという事が。


「幾松殿・・・」
「気軽に触らないでよ・・・」
そう言いながら。その体温に。
それでも貴方がこの世にいる人だと、確かめて

「幾松殿・・・」
「気軽に触らないでよ・・・」

すまぬ。
貴女のそんな顔を見るたびに。
そんな顔をさせているのが他ならぬ自分だと感じるたびに。

自分は貴女の傍にいてはならぬのだと思う。
去らなければと思う。

けれど。

「幾松殿・・・」
「・・・か、つら?」
もう少し、あと少しだけ。
この温かなぬくもりを腕の中に収めていたい。
感じていたいと。
そう思うのは俺のエゴだろうか

察しておくれよ花ならつぼみ 咲かぬところに味がある

どうせ互いの身は錆び刀 切るに切られぬ くされ縁
紅桜編短髪桂

攘夷戦争時代

身を寄せたる君の髪の香りに

揺られ揺られて電車の中で。